研究内容(Research Activities)

液体と気体のクロスフロー現象に関する研究

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自動車塗装や燃料噴射では、液体を空気中に噴き出して細かな霧にする「微粒化」が重要です。このとき、液体と気体が直交して流れる気体と液体のクロスフローが生じ、液体は曲がり、伸び、分裂して液滴になります。しかし、その詳細な仕組みは十分に理解されていません。私たちの研究室では、このクロスフロー現象に注目し、数値シミュレーションと実験を組み合わせて液体分裂のメカニズムを解明しています。 数値解析では、気体から液体に与えられるエネルギーを定量的に評価し、粘度やせん断で性質が変わる塗料では分裂挙動が大きく変化することを示してきました。さらに、電場を印加したクロスフロー解析により、電気力が液体表面の不安定性を強め、微細な液滴生成を促進することも明らかにしています。実験では、学生が主体となって設計・製作した装置を用い、実際の流れを可視化して解析結果の検証を行っています。最近では、ノズル形状や電場を含めた操作条件が分裂を制御する鍵になることに着目し、実プロセスに役立つ指針の構築を目指しています。


関連の論文発表

  1. Saito et al. (2026) "Effects of triangular nozzle geometry on the deformation and breakup of liquid jets in crossflow", Chemical Engineering & Technology, doi:10.1002/ceat.70150
  2. Soma et al. (2025) "Numerical investigation of liquid jet breakup in rotary atomizer", Chemical Engineering & Technology, doi:10.1002/ceat.70043
  3. Saito et al. (2025) "Estimation of the specific kinetic energy increase for liquid jet breakup in air crossflow", Atomization and Sprays, doi:10.1615/AtomizSpr.2025056167
  4. Saito et al. (2025) "Three-dimensional evaluation of liquid jet shape in liquid–gas crossflow under electric field", Chemical Engineering Science, doi:10.1016/j.ces.2024.121081
  5. Saito et al. (2025) "Effects of viscosity and shear-thinning characteristics of a liquid jet in air crossflow", International Journal of Multiphase Flow, doi:10.1016/j.ijmultiphaseflow.2024.105071

液滴衝突と粒子挙動

噴霧塗装では、空気中を飛んだ液滴が固体表面に衝突し、広がりながら塗膜を形成します。このとき、塗料中に含まれるアルミフレークなどの粒子がどのように移動し、どの向きにそろうかが、塗装の外観品質を大きく左右します。しかしながら、液滴内部は高速で変形し、粒子の動きは非常に複雑なため、その詳細は十分にわかっていません。私たちの研究室では、数値シミュレーションを用いて、液滴衝突時の内部流動と粒子の移動・回転挙動を三次元的に解析してきました。さらに、学生が主体となって設計・製作した実験装置を用い、高速度カメラによる可視化から、粒子が衝突中に移動し、姿勢を変えていく過程を定量的に捉えています。数値解析と実験を組み合わせることで、粒子の移動距離や配向を予測するモデルを構築し、塗装プロセスを物理に基づいて設計することを目指しています。


関連の論文発表

  1. Saito et al. (2026) "Three-dimensional tracking and modeling of flake particle migration during droplet impact", Chemical Engineering Science, doi:10.1016/j.ces.2025.122503
  2. Saito et al. (2025) "Numerical prediction of flake-particle displacement and orientation during droplet impact", Next Research, doi:10.1016/j.nexres.2025.100518
  3. Saito et al. (2025) "Numerical analysis of droplet impact behavior and changes in flake particle orientation within droplets on a solid surface", Chemical Engineering Science doi/10.1016/j.ces.2025.121299
  4. 齋藤ら (2025) "液滴衝突における粘度およびshear-thinning特性が液膜内の界面速度と変形挙動におよぼす影響", 化学工学論文集, doi:10.1252/kakoronbunshu.51.75

製銑工程における石炭・コークスの移動現象

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製鉄プロセスで使われるコークスは、炉内で高温・反応性ガスにさらされながら、構造を支える重要な役割を担っています。しかし実際の炉内条件では、コークスは高温かつ反応中に強度が変化しており、室温で評価される従来指標だけではその挙動を十分に説明できません。 私たちの研究室では、「高温・反応中のコークスはなぜ、どのように強度が変わるのか」という根本的な問いに取り組んでいます。実験では高温圧縮試験を行い、CO₂反応中のコークス強度を直接測定します。さらに、X線CTによって三次元的な細孔構造を可視化し、その構造を忠実に反映した数値モデルを用いて応力解析を行っています。近年は、低品位炭(褐炭)から作製したコークスにも対象を広げ、資源制約とCO₂削減を両立する次世代コークス設計に向けた物理モデルの構築を進めています。
写真は、小倉駅の新幹線口のペデストリアンデッキから見えていた高炉です。


関連の論文発表

  1. Saito et al. (2022) Hot coke strength in CO2 reaction, ISIJ International, doi:10.2355/isijinternational.ISIJINT-2021-305
  2. Saito et al. (2022) Hot strength of coke prepared by briquetting and carbonization of lignite, ISIJ International, doi:10.2355/isijinternational.ISIJINT-2022-143
  3. Saito et al. (2023) Estimation of material constants of hot coke under inert atmosphere, ISIJ International, doi:10.2355/isijinternational.ISIJINT-2022-190
  4. Saito et al. (2024) Numerically estimated hot strength of coke produced by briquetting and carbonization of lignite, Fuel, doi:10.1016/j.fuel.2023.130656

カーボンニュートラル社会実装のためのCO2分離回収プロセスにおける移動現象

東邦ガスおよび名古屋大学が共同で提案したNEDOのGI事業において、アミン吸収液を使った燃焼排ガスからCO2を回収し、吸収させたCO2をCO2のドライアイス化させることで分離させるプロセスにおける現象を数値解析により評価しています。

研究紹介の動画

2020年オープンキャンパス用に高校生向け作成した研究紹介の動画です。

測定装置

当研究室が保有する測定装置の一部を紹介します。

1次元レーザードップラー流速計(High-speed Camera)

LDV

Measurement Science Enterprise Inc., 1D-miniLDV-FG
2018年購入
参考WebPage 販売代理店:西華デジタルイメージ株式会社(SEIKA Digital Image Corp.)

※画像は、販売代理店ホームページより転載しています。

ハイスピードカメラ(High-speed Camera)

ハイスピードカメラ

株式会社フォトロン(Photron Ltd.), SA3
2012年購入
参考WebPage

レーザー回折式粒径分布測定装置 Spraytec(Laser Diffraction Spray Particle & Spray Droplet Size Measurement)

Spraytec

マルバーン株式会社(Malvern Ltd.), STP5942
2013年購入
参考WebPage

※画像は、販売店ホームページより転載しています。

数値計算

当研究室で行っている数値解析に必要なソフトウェアや計算機を紹介します。

解析ソフトウェア(Simulation Softwares)

Softwares

オリジナル自由表面解析コード:Surf
商用熱流体解析ソフトウェア:FLUENT(ANSYS)
商用熱流体解析ソフトウェア:scFLOW(HEXAGON)
オープンソース型粒子解析ソフトウェア:LIGGGHTS

※画像は、それぞれのホームページから代表的な解析例を一部トリミングして転載しています。

ワークステーション(Workstations)

Workstations

数値計算専用マシンが約20台
OS: Windows10, Linux(Ubuntu)
NASサーバが2台

共同研究の募集(Collaboration Research)

プロセス解析工学研究室では、流体・液滴・噴霧実験や数値計算および石炭・コークスに関する共同研究・学術コンサルティング・寄附金を募集しています。協働できることがあれば気軽にお問い合わせください。
細かい規定については、九工大共同研究学術コンサルティング制度寄附金をご覧ください。